エナンが引退して3ヶ月。エナンのいない日々に、だいぶ慣れてきたところです。エナンを応援し始めた2001年からの思い出を書きます。もう二度とエナンのように夢中になれる選手はいないでしょう。
7年前に出会ったベルギーの女子プレーヤー。それは最高のテニスプレーヤーになりました。ファンになれたこと自体が大きな喜びであり、ラッキーでした。記憶に残る場面、すべてを書き記しておきたいと思います。
*スコアなど事実関係で間違いがあるかもしれません。発見された方はご指摘ください。随時、訂正していきます。
■2001フレンチオープン
2001年5月28日、フレンチオープン1回戦。私はエナンを見つけた。日本の浅越選手との対戦だったため、WOWOWで放送されたのだ。(ずいぶん後で、エナンファンから送ってもらったビデオで見るとダイジェスト版だったから、ライブ放送ではなかったのかもしれない。)当時は、なんとなくヒンギスファン。元々テニスを見始めたきっかけは1999年フレンチのグラフ対ヒンギス。そこでグラフファンになったのだが、ウインブルドン後に引退してしまったため、なんとなくヒンギスを応援していた。ダベンポートやカプリアティやウイリアムズ姉妹にドカンドカン打ち込まれながら巧妙なテニスで対抗するヒンギスが好きだった。そんな中で見つけたエナン。
まず、フォアハンドにホレた。当時のエナンのフォアはテイクバックが大きかった。身体がまだ細く、それが打つたびにクルンと一回転してしまいそうだった。あれに惚れた。当時、ああいうフォアを打つ女子はいなかったと思う。今でもほとんどいない。あれは男子の打ち方で、私はあの打ち方が大好きだった。だからエナンのフォアを見た時、やった! と思った。そしてバックハンドが片手だった。エナンは鞭をしならせるように片手のバックハンドを振るっていた。元々がグラフファンだから、「バックは片手」派だった。しかも脚が速かった。運動神経が凄くよかった。私は歓喜した。試合が終わった時、すでに完全にエナンのファンになっていた。 「素晴らしい選手を見つけた」と、その日の日記に書いた。素晴らしく運動神経のいい、素晴らしくカッコイイ、素晴らしく肩のいい選手に出会ったと。
エナンは肩がいい。ちゃんと回る。その後もエナンほど肩のいい選手は見たことがない。クズネツォワとセレナもいいと思う。しかしボールを投げさせたら、エナンのフォームが一番きれいで、一番飛ぶんじゃないかと思う。私は肩のいい選手が好きだ。女子テニスに感じるもどかしさのひとつは、肩の弱さに起因すると私は思っている。肩がちゃんと回せない選手が多い。男子と女子の差は、すべての点で力的に大きくあるだろうが、肩については使い方そのものに大きな差があると思う。エナンは、そのフォアを見てもバックを見ても、そしてスマッシュを見ても肩の良さは歴然だった。
そして何よりエナンの見た目に、私は何か得も言えぬものを感じた。エナンの表情は、今もどう表現していいかわからない。何か思い詰めたような、必死とか真剣とかを通り超えていた。私はこれを表す言葉を知らない。強いて言えば、高校の部活少女の一心不乱な顔である。疲れを知らぬ獣の子のような目をして、しかしそれは自身の内の何かを深く見つめているような目だった。インターバル中、ベンチに座ったエナンの眉間には、すでに皺があった。グラフのような、は言い過ぎだが、それに近い皺があった。色白でほっそりしたエナンの顔は、どちらかというと地味顔だったが、その目と眉間の皺が、めちゃくちゃ勝ち気かつナーバスな風情を与えていた。
エナンが小柄であることは、解説者(遠藤愛だった)が指摘するまで気がつかなかった。今思うと、たしかにびっくりするほど細かったのだが、華奢という印象は持たなかった。細いなりに筋肉質だったからだろう。そして167pという身長より、胸もお尻もないペラペラした体型に惹かれた。自分もチビでペラペラしているので、がぜん親近感が湧いた。私は大きくてガッチリした選手が好きでない。だから当時、ダベンポートは大嫌いだった。
あの年のフレンチオープンでWOWOWは、エナンの2回戦のスアレス戦、4回戦のシェット戦を放送している。まだ第14シードだったエナンを、なぜこれほど取り上げたのか不思議に思う。これらのビデオをずいぶん後になって見たが、解説の遠藤愛や実況アナが、すでにエナンを一角の選手として取り扱っているような口ぶりに驚いた。そのポテンシャルを高く評価されていたわけだ。
実際、このフレンチオープンで、エナンはセミまで来た。ファンになったばかりの選手がセミまで来たことを驚き喜びながら、一方で、「ある程度想定内」のような気配も漂っていたと思う。エナンのクオーター山にいたビーナスが1回戦で敗れたこともあるだろう。そのビーナスを下したシェットを4回戦で破り、クオーターファイナルは、当時やはり若手で期待のクラスノロツカヤとの十代対決を制し、エナンはグランドスラム初のセミファイナル進出を果たした。
●2001フレンチオープン・セミファイナル
相手は、同じベルギーのキム・クライシュテルス。この大会では、エナンと同じくらいかそれ以上に注目されていたらしい。キムは第12シードだった。
木曜日の日本時間夜9時。私は終わらない仕事を切り上げて、家に飛んで返り、テレビの前に座った。試合前に、これほど心臓をドキドキさせたのは初めてだった。
第1セットはエナンが順調に飛ばし、62でゲット。第2セットも先にブレイクして、41まで行った。勝てそうだった。勝てると思った! しかし続く第6ゲーム。キムのサービスゲームでもブレイクポイントを握ったのに、そこを取り逃す。42。ここからエナンの調子が狂い始めた。第7ゲームをブレイクされて43となると、形勢が逆転してキムの流れになった。エナンの方に少しずつミスが出る。少しずつ消極的になる。エナンの表情が曇っていくのが、はっきりわかった。反対にキムの強打がどんどん決まりだし、そうなるとエナンは打ち返せない。あの頃のエナンは、先に攻められると、もうダメだった。切り返しのカウンターショットやパッシングは当時から上手かったと思うが、当然今ほど上手かったわけではない。第2セットをそのまま押し切られて46で落とすと、第3セットも先にブレイクされてしまった。ずるずると負けたという印象が残っている。
第3セットに入ると、明らかにエナンに勢いがなくなり、スライスのバックが増えていった。気持ちで押されてしまったように見えた。それまで解説の人が「エナンのショットには迷いがありませんね!」とか、「常に強気ですね!」とか言うのを聞いて、本当にそうだなと思っていたのだが、その時のエナンは一振りごとに迷いが空を切るようだった。だんだんとうなだれていくエナンが切なく見えた。負けていく選手の、テニスというスポーツの切なさを、初めて知った。まだファンになって間もなかったが、そのエナンのプレイの陰と陽を見たような気がした。今思うと、それはテニスという競技のもつ魔性そのものである。どんなに強気な選手でも、どんなに調子よく行っていても、ふとしたことで狂い、崩れる。あの時感じたエナンの脆さは、しかしその時だけではなく、その後もずっとエナンにつきまとうことになる。しかし私は、この選手はきっと強くなると確信に近いものを感じていた。この後しばらくこの選手を応援できる、まだ19歳だから十年ぐらいは応援できると思うと、うれしくてならなかった。今から7年前のこと。その予感は、半分は当たり、半分は外れた。
ベルジャン対決を制したキムは、決勝でカプリアティを相手に3セッター。ファイナルセット12−10という激戦の末、敗れた。この大会で、二人のティーンエイジャーのベルジャンは、華やかなグランドスラムデビューを果たした。そして二人揃ってトップテン入り。近い将来のWTAを担う選手になる。はっきりそう期待させるだけの才能とオーラが二人にはあった。二人の傑出した才能が現れた2001年フレンチオープンは、私にとって、テニス界にとっても、幸せな大会だった。
■2001ウインブルドン
フレンチオープンでエナンを見つけるまで、私はグランドスラム以外にどんな大会があるのか知らなかった。ティア1も2も、WTAがなんなのかも知らなかった。大会のオフィシャルサイトを見ることもなかったし、ネット上に膨大な情報が飛び交っていることも、もちろん知らなかった。
フレンチオープンが終わって、私の生活が変わってしまった。ネットは仕事では利用していたが、日本語サイトで用を足していた。しかし、テニスニュースを読むには日本語メディアでは遅すぎることを知った。必然、英語サイトをチェックし始め、私のネット世界は突如、膨大に広がった。最新の辞書を買い、英語の記事を読みまくった。
フレンチオープンのサイトでエナンのインタビューを読み、インタビュービデオを見て、エナンは賢い子だと思った。まだ英語の語彙が少なく、首の据わらない子供のようなあどけない表情で受け答えしていたが、その応答は的確だし、表情にチャラチャラしたところがまったくなかった。非常に真面目だった。その真面目さが私は好きだった。
すでにエナン情報を載せている個人のホームページがいくつかあった。そのひとつにオーストラリアの人のサイトがあった。そのサイトで、エナンがオランダの芝の大会でキムを破って優勝したことを知った。また、エナンがすでに婚約していることも知った。これには驚いた! まだ19歳なのに? しかしエナンは18歳でピエール=イブ・アルデンヌと婚約していたのだ。2001年のオーストラリアのどこかのインタビューで、「結婚は2年以内に」と答えていることも知った。本当に驚いた。
ウインブルドンが始まった。2回戦、オランダのブーゲルト戦をNHKがライブで放送。たしか18番コートだった。エナンは第8シード。ブーゲルトは120位台の予選上がりの選手だったが、とても調子よく、エナンはエラーが多く、第1セットは競った挙げ句、57で落としてしまう。第2セットもすぐにブレイクされて03になってしまった。ガー!! 負けてしまうのか? この日初めて、エナンの逆転劇を見た。第2セット、14からの逆転だった。24から第7ゲームをようやくブレイク。キープして4オール。しかし次をキープされて45。5オールにしてから次をブレイクして、第2セットを75で取り返した。ブーゲルトのダブルフォルトが肝心な場面で連発されて、だいぶ助けられた試合だった。エナンの方はダブリなし。第3セットは完全にエナンのペースになって62ぐらいで勝利した。このビデオは何度も見直した。
3回戦、4回戦の放送はなかった。当時の私にはまだ、ライブスコアボードを夜なべして見るほどの入れ込み方はなかった。放送がないとわかると、翌朝早起きしてネットを開け、WTAのオフィシャルサイトで結果を見た。ネットを立ち上げ、モニターの画面が切り替わるまでの、数秒か数十秒かの祈るような気持ち。HENINの太文字を見た瞬間の歓喜。すでにエナン中毒になっていた。
クオーターファイナルの相手はスペインのコンチータ・マルチネス。これは録画だったが、前の試合が早く終わったらしく、夜中の2時ぐらいから放送された。61,60と圧倒した試合だった。思えば、このクオーターはラッキーだった。第1シードのヒンギスが、どこだか覚えていないが早々に負け、マルチネスが上がってきたのだが、もうひとつのクオーター山はセレナ対カプリアティという激戦カード。ボトムハーフはダベンポート対キム、ビーナスの相手は覚えていないがトージアだったかもしれない。というわけで、この時のエナンはドロウに恵まれたといっていい。ほかのベスト4の顔ぶれはカプリアティ、ダベンポート、ビーナス。アメリカのパワーヒッター3人に、場違いなほど小柄なエナンがひとり混じっていた。
2008年08月12日
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2001年のエナンを私は知りません。ochappaさんの言葉から当時のエナンを想像(妄想)します^^
オリンピック見てますか?
北島クンはスゴイ男ですねぇ、興奮しました。
もの凄いプレッシャーの中で発揮する強さ、その姿にエナンがダブって泣けました。カッコよかったなぁ。
テニスは杉山さんも錦織君も負けてしまいました。杉山さんには是非ダブルスで頑張ってもらいたい。しかし2回戦でW姉妹という山^^;
このサイトはお気に入り中のお気に入りです。
私は2005年フレンチオープンからのエナンファンです。
なんでもっと早くテニスを見始めなかったんだろう、
そしたらもっと長くエナンを見ていられたのに、って後悔します。
でも全く知らなかった場合を考えられたら、
遅くてもファンになれてよかった。
休み中ってこともあって毎日オリンピック見ています。
エナン、柔ちゃん、北島君、私の中でこの3人はだぶります。
みんな体格的には恵まれていない、でも才能もあるんだろうけど、とにかく努力でNo.1になった人達。
そしてすごい精神力。
他の選手だったらすごい記録を成し遂げても、彼らなら当然、もっとすごい偉業を要求されてもそれを力にかえられる精神力。
そしてまた人間的にもすばらしい人達。
とにかく、エナンの事に結びついちゃいます。
テニスは誰がメダル取るんですかね?
W姉妹が有力だそうですが。
この観戦記はごく主観的なものですが、エナンの足取りはだいたいわかる内容になると思います。
オリンピックは荒れてるようですねえ。
クズもリ・ナさんに負けちゃって。今年はダメクズですね。
ドロウ見てないんですが、ひそかにパティが銅メダルと予想してます。
ちょと話したい事があります。emailはなんですか?
よろしく、
greenout@justine-henin.be
(ちなみに私のアドレスは「このブログについて」中に記してあります。)
これ見た?アメリカ大学Oklahomaフットバールの若スターQuarterbackはエナンにそっくり?(私はフォトバールがしらないけど有名プレイヤーだってさ!)
^^
Sam Bradford-Henin
http://img231.imageshack.us/img231/6531/sambradfordpicturejujutr5.jpg
http://www.nancarrow-webdesk.com/warehouse/storage2/2007-w39/img.12938_t.jpg
サッム君のインタビュー(エナンとにてる!!!!)
http://www.youtube.com/watch?v=fXlv_Eiu8Gw&feature=related